1974年の話し方

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話し方よさらば!

 その景色はいつまでも変わらない。何もなかった原っぱにビルが建っても、公園に新しい遊具が増えても、目を閉じれば子供の頃に走り回った街の風景が鮮明によみがえる。どんなに歳を重ねても胸に浮かぶ故郷(ふるさと)は同じで、時折口を衝く言葉だって変わらない。いいじゃん、いいじゃん、大丈夫だべ…。   両手に荷物を抱えた帰省客が駅に溢れたお盆のある日のことである。箒(ほうき)と塵取を手にして構内を巡回していると、トイレの前でお客の話に頷いているパンチさんの姿が見えた。お客の男性は不快そうな顔を、パンチさんはどこか寂しげな顔をしている。何か苦情でも言われているのだろうか。俺は近付いて二人の間に入った。  「パンチさん、どうしました?」「…何でもないで! トイレ使ってもええか聞かれただけやで」「……………」「お兄さん、このおばさんの上司?」「はい、そうですが、何か失礼がございましたか?」「失礼じゃないんだけどさー、聞きたくないっしょ?」「…何を聞きたくないのですか?」「関西弁だよ、関西弁! 耳障りっしょ? やっとあのうるさい街から解放されて帰ってきたのに、聞きたくないっしょ!」  俺は関西弁を耳障りだとは思わないし、その言葉がこだまする街をうるさいと感じたこともないが、この男性にとっては不快な場所だったのだろう。個人の価値観として、嫌悪感を抱いたり、受け入れることの出来ないものがあることは仕方ない。だが、それが地域の文化や言葉だとしたら…。「…関西弁ですか。お客様はどうして関西に行かれていたのですか?」「仕事だよ、仕事! 半年もあんな所に出張させられたらたまらないっしょ! やっと帰って来てさ、トイレを使っていいか聞いたら、まさかの関西弁だよ…」「そうでしたか…。お客様はどちらのご出身なのですか?」「ここだよここ! 札幌!」「…私は横浜の出身ですが、北海道は食べ物が美味しいですよね」「やっぱり? 何でも美味いっしょ!」「そうですね、美味しいです。でも…、どこにでもその土地の言葉がありますよね? 東京にだって、私が生まれ育った横浜にだってあります」「はっ? 何が言いたいんだい?」「自分の故郷をですね、否定されたり、けなされたら悲しいですよね。いや、悲しいだけじゃなくて腹が立つ人だっていると思います」「清掃氏はん、言わんでもええで…」「いや、言います…。お客様はご自分が話している言葉を耳障りだと言われても、何も感じないのですか?」「はぁ? 清掃員が俺に説教かい? 都会の生まれだからって北海道を馬鹿にしているの?」「馬鹿なんてしていませんよ。俺は…、いや、私は北海道が大好きです。妻ともこの街で出会いました」「そんなこと聞いてないっしょ!」「そうですね…、申し訳ございません。私がお客様にお聞きしたいのは、自分の言葉で話してはいけないのでしょうかってことです」「話したっていいよ! でも、標準語ってのがあるっしょ? 日本の首都、東京の言葉だよ!」それは間違えている。標準語=東京語ではない。また、今は標準語ではなく共通語と表現するようになってきている。「今、お客様が使われている言葉は東京語なのですか?」「違うよ! お兄さん、耳が悪いの? 俺が言いたいのはさ、関西弁は標準語と離れ過ぎているってことだよ。まだ北海道弁の方が近いっしょ?」何とも煮え切らない理屈である。はっきりと関西弁が嫌いだと言った方がすっきりするのではないだろうか。呆れて言葉を返せずにいると、女子トイレの中から北海道留萌市出身の婆さんが出てきた。  「あんたたち、さっきからうるさいわねぇ。こっちはトイレが詰まって大変なのよ。気が散って仕事にならないわ」「かっ、会長…、トイレブラシとラバーカップは置いてきて下さいよ」「アタシの標準装備なのよ」「いっ、いや…、トイレブラシとラバーカップが標準装備って…。せめてオプション装備にして下さい」「あんたたちが標準標準ってうるさいからよ。中まで聞こえてきたわ」こちらはぐつぐつと煮え切った理屈である。「うわっ、きったねぇ。この人…、何なの? 頼むから振り回さないでくれよ」「お兄さん、アタシの標準語は自分が使っているこの言葉よ。人それぞれ、家庭それぞれ、地域それぞれの標準語があってもいいじゃないの? 大体ね、標準て何よ?」標準とは? 難しい問いである。基準や水準とは違うし、平均とも異なる。あえて言えば、広く普及しているものだろうか。「標準が何かなんて俺には分からねぇよ。今は言葉の話をしているんだよ。お婆さん、分かってる? 標準語ってのがあるっしょ?」「じゃあ、あんたが言う標準語って何なのよ?」「誰にでも伝わる言葉だよ。日本の首都、東京の言葉! お婆さん、行ったことある?」だから、それは違う。何度も言うが、標準語=東京語ではない。「ないわよ! で、あんたは関西弁だと、標準語じゃないと、何を言っているか分からないってことなのね」「違うよ! お婆さん、馬鹿なの?」「馬鹿なのはあんたよ! 生まれた場所も育った環境も違うんだから、言葉だって話し方だってたくさんあって当たり前でしょ! それが嫌ならずっと家の中にいなさいよ!」「……………」「人間に標準なんてないのよ。言葉だけじゃないわ、身長や体重だってそうよ。骨の太さも手足の長さも違うんだから、標準なんたらっていうのはおかしいわ」「……………」「標準、標準、標準…、そんなに標準が好きならね、あんたが標準になればいいじゃないの?」「あっ、いや…、会長、さっきは標準なんてないって…」矛盾している。興奮して何を言っているのか分からなくなったのかと思った。だが、そんな婆さんではなかった。「清掃氏さん、あんたらしくないわね。そうやって言葉の上っ面(うわっつら)だけを見てちゃダメよ。アタシが言っている”標準”はね、拠り所よ」「拠り所…、ですか?」「そうよ。アタシはいつも自分じゃない誰かを標準に…、拠り所にして生きているわ」婆さんは知っていたのだろうか。標準という言葉を辞書で引くと、物事を行う場合の拠り所となるものと解説されている。そして拠り所とは、頼みとするもの、支えとなるもの、物事が成り立つもとになるものである。その意味では、人はいつだって他の誰かを標準にして生きている、そう表現することも出来るだろう。「会長…、目から鱗が落ちました」「ガハハハハ、あんたもなかなかだけど、まだまだね。でも、アタシはあんたの夢、応援してるわよ。たくさんの人の拠り所になれるような作文を書きたいんでしょ? ずっと前に妹子さんから聞いたわよ」「いっ、いや…、作文て…」「お兄さん…
あんたもね、誰かの標準になってみなさいよ。言葉がどうとか…、そんなちっちゃなことを言っているうちはダメね。別に嫌いなものがあってもいいけど、そういうことの中にこそ自分を大きくしてくれる種(たね)があるのよ。無理に飲み込めって言ってるんじゃないわ。よく見てみなさいってことよ。思っているよりもずっと綺麗な色をしているかもしれないわ」「…お婆さん、何者だい?」「何者って…、見れば分かるじゃない! あんた、目が悪いの? アタシはトイレ清掃のババアよ、ガハハハハ」婆さんの高笑いは黄門様の印籠のようなものである。男性は深々と頭を下げ、バスターミナルへ向かって歩いていった。  「ほらっ、あんたたちも仕事に戻るのよ。清掃氏さん、あんた最近、トイレ掃除してないんじゃないの? 若い子に任せてばかりじゃない…」「そっ、そうかもしれませんね…。よしっ、久しぶりにやりますか! ラバーカップを貸して下さい。俺のテクニックを見せてあげますよ」「あんたとトイレでピクニックなんてしたくないわよ」「いっ、いや…、ピクニックじゃなくてテクニックです…」「どっちでもいいけど、こっちはサブさんがいるから大丈夫よ。あんたはパンチさんを手伝ってあげなさい」「どっちでもいいって、そんな…。あっ、いや…、分かりました」実は正直ホッとした。詰まったトイレを見なくて済んだからではない。女子トイレに入るのはいつになっても気が引ける。俺はパンチさんの背中を追いかけて男子トイレに入った。そして、並んで小便器を磨いていると、いつものようにこう話しかけられた。「飴ちゃんやるで!」「あっ、いや…、今は…。でも、その言葉を聞いて安心しました」「さっきは助け船だしてくれておおきにな」「いや、俺は何も…。気にしないでパンチさんの言葉を大切にして下さいね」「清掃氏はん、あんたええ男やわ。ほんまおおきに」「…それにしても、今日はお客さんが多いですね。混んでいるから、ちょっと休憩に行きましょうか? 空いてからやった方が早いし楽ですよ」「せやけど、会長はんらを置いていくわけにはいかへんし…」「えっと…、今の気持ちを自分の言葉で言いますね。いいじゃん、いいじゃん、大丈夫だべ!」    文:清掃氏 絵:清掃氏・ekakie(えかきえ)  国立大学卒トイレ清掃員@fukunokaori  駅の清掃というと、婆さんがぷらぷらしているイメージがあったり、大して仕事をしていないように見えるかもしれないが、毎日、そして毎月、これだけの作業がある。 吐瀉物の処理や落書き消しは、もちろん別メニュー。 たまに言われる「お疲れ様」… https://t.co/9C42kWog1E2018年08月01日 16:51  

話し方 快適住まいを真心サポート

こんばんは。
明石市認定、あかし子育て応援企業 ゆうべファミリー治療院の夕部良枝です。

9月17日(月祝)の【小児アトピー治療に自信が持てるようになる!あとぴっこママとのコミュニケーション勉強会】
【お申込みフォーム】https://ws.formzu.net/fgen/S73159390/


残り1名参加可能です。

参加してくださる皆さん、ありがとうございます!

興味を持ってくださった鍼灸師さんや、今回は予定が合わなかった鍼灸師さんもいて、そんな風に声を掛けてくださってありがたく思っています。

当院のコミュニケーション勉強会では、その日から使っていただける、実践型の勉強会です。
だから、この日にベースとなるコミュニケーション方法をしっかり身に付けていただくために、6名以上は受け付けていません。
「小児はりでアトピー改善の症例がなかなか増えない」「口コミや紹介が起こらない」「患児が集まらない」とお悩みの鍼灸師さんに是非、参加していただきたい勉強会です。

当院で多くの子ども達がアトピーを改善できてる最大の秘訣は、【改善するまで通い続けてくれる】こと。

そのために必要な【続けてもらう】ためのコミュニケーション方法をお伝えさせていただきます。
年間2000人以上のお母さん達と話し、お母さん達の気持ちの伴走者をしている主人だからこそ、お伝え出来る内容です。 
お母さんの気持ちを掴むコミュニケーションで、お母さんを楽にして、鍼灸師さん自身も、お母さん達の感動の笑顔を見てください。 
どうか、不安な気持ちでいっぱいのお母さん達のために、寄り添う存在になって欲しいと願っています。
【小児アトピー治療に自信が持てるようになる!あとぴっこママとのコミュニケーション勉強会】 
〈日時〉9月17日(月・祝)午前10時~午後5時 
〈場所〉ラミ本町 541-0054大阪府 大阪市中央区南本町3丁目5-5大阪メトロ御堂筋線 本町駅⑺番出口徒歩1分‭https://lami.space/honmachi/※当方で駐車場はご用意いたしておりません。 
〈費用〉22,000円(再受講希望の方はご連絡ください) 
『お試し体験会』などで次に引き延ばすことは、私がやりたくないのです。私のことを知らない先生は、いきなり申込むのは勇気がいると思います。ただ、直感で必要性を感じましたら、ご検討ください。 
〈定員〉6名(残1名) 〈申込み締切〉9月10日(月)もしくは定員に達した場合  〈キャンセルポリシー〉 キャンセルされる場合は、キャンセルポリシーに基づきキャンセル料が発生いたします。申し込み前に必ずご確認ください。 ◎キャンセル料 ・連絡なしの不参加:受講料の100%・セミナー7日前~当日:受講料の100% 〈参加資格〉 小児施術の流派や手技は問いません。小児施術をされている(される予定の)方で、今よりさらに子どもや保護者を支援したい方。 ※鍼灸師以外の方の参加も可能です。 ※特定の小児施術の方法をレクチャーする勉強会ではありません。ご注意ください。 
〈以下ような方は、こちらの判断で参加をお断り、または途中退室をお願いする事がございます〉 ・小児の治療や保護者とのコミュニケーションに興味のない方。・自分が行っている方法や考え以外を受け入れたくない方。・攻撃的、威嚇的な方。・言動が勉強会の内容から逸脱しすぎている方。  安心安全に真剣に学びたい方々へのご理解ご協力をよろしくお願いいたします。 
〈講師〉 夕部智廣(ゆうべともひろ) ゆうべファミリー治療院院長鍼灸師保育士大師流小児はり上級認定施術者米国NLP協会™️ NLPトレーナー3児の父親 ・日本小児はり学会特別講習会講師・治療者向けNLP講座開催多数・複数の公的施設(育児施設・障害支援センターなど)で小児はり体験会開催多数 お申込みの方は、以下の【お申込みフォーム】からお申込みください。 
【お申込みフォーム】‭https://ws.formzu.net/fgen/S73159390/  
【ご注意】 ※携帯メールアドレスを連絡先に指定される方は、必ず yubekodomo@‭gmail.com‬(@を半角にしてください)からのメールを指定受信設定してお申込みください。※返信メールが来ない場合は、ご記入いただいたメールアドレスの間違いや、メールフィルタにかかってしまっている、迷惑メールに振り分けられている等が考えられます。返信メールがこない場合は、迷惑メールフォルダをご確認の上再度お申し込みいただくか、直接お電話‭078-995-8157‬でお問い合わせください。
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◆勉強会3つのテーマ・患児に来てもらう仕組み作り・小児アトピーを知る・保護者に信頼してもらう話し方
◆「小児アトピー治療」どうしてうまくいかないのか?・大人に対する同じ方法で集患している・成人アトピーと同じ方法で治療している・治療者の提供するものが患児のママが本当に求めている部分とズレている
◆患児に来てもらうために・知ってもらう仕組み作り・来てもらう仕組み作り・続けてもらう仕組み作り
◆小児アトピーを知るために・距離感の取り方を学ぶ・大人のアトピーとは違うものと認識する・小児アトピーの向き合うポイントを学ぶ・子どもの『命』を最優先に考える
◆保護者と速やかに信頼を築くために・初診がポイント・素早く信頼を築く言語モデルを学ぶ・ママが響くキーワードを知る・ママの人生の価値観を再構築
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『刺さない小児はり』は、お子さんの日常の不調(癇癪・夜泣き・アトピー性皮膚炎や乳児湿疹などの肌荒れ・食べムラ・便秘・チックなど)に効果があります。
ゆうべファミリー治療院Instagram‭http://instagram.com/yube_family
明石市認定、あかし子育て応援企業 ゆうべファミリー治療院夕部良枝。

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